週末は水着とおにぎり持って家族でイタドリを採りに行っててん。
でかいゴミ袋六袋分のイタドリを
ビニールシートに広げて、真ん中に座る父の横に、私たちが気まぐれに行っては、剥いだりして。
大人になっても、その時のめんどくさかったトラウマがしばらく抜けなかったよね。
EARTHLING
STUDIOにて。
料理というとてつもない手間
2024.10.13.Sun
ー イタドリとの最初の思い出はありますか?
父が、山菜採りがすごく好きで、イタドリの時期になったら、
毎週末、家族で採りに行ってたね。
ほぼピクニックだよね。
川があるところだったら、もう水着とかも全部持っていって。
ー 水着?
そう、泳げるように全部準備して、
朝からおにぎりをバーって握って「ほら行くぞー」って。
ひと通りイタドリを採った後に、 川でみんなで泳いで、
ご飯食べて。父は、食べている間も、気になるもの見つけたら、
水着のまま採りに行ったりもするんだけど(笑)
夏休みの間は、毎週、時間が許す限りやってた。
ー どれぐらいの量を採るんですか?
大きいゴミ袋6枚ぐらいを満タンにして帰ってくるんよ。
それをビニールシートに広げて、 父が真ん中に座って、
ずっと剥ぐねん。で、その横に私たちが気まぐれに
行っては剥いで、飽きたら遊んだりとかしてた。
ー その量のイタドリって、家族で食べきれるんですか?
いや、どうしてたんやろうね、あの量。わからんけど、
多分誰かにあげてたんじゃないかな?
ー 小さい頃と大人になって、イタドリの印象はどう変わりましたか?
大人になってから20年くらい大阪にいたから、
イタドリを口にする機会もグッと減ったよ。
高知に帰ってきてからも、やっぱり、「面倒くさい」っていう
子供の時のトラウマが残ってて、イタドリを見かけても、
「あ、イタドリか、懐かしいな」ぐらいで、
それを料理しようっていうとこまで行かへんかった、しばらく。
塩漬けにせずとも美味しく食べれるんやなって
いうのを発見した時に、トラウマが取れて、
毎年必ず買うようにはなったけど。
ー それを毎週やってたお父さんって(笑)
最終的に美味しく食べるために採りに行くんだけど、
その過程も楽しいわけやんか、彼にしたらね。
イタドリを採るついでに、川遊びして、山歩きして、
蝶の採集とかもしてたんよ。
珍しい蝶々を見つけたら、虫取り網と虫かごを
車から取り出して採集してた。全部を一気にできるから、
その過程を楽しんでる感じはすごいした。
ー EARTHLING STUDIOを始めたのも、お父さんの影響があるんですか?
自分が飲食店をするとは思っていなかったけど、
料理をして、誰かに食べてもらってね、
それがすごい喜びであるっていうのはあったよね、どっかにね。
そういう父の背中見て育ってるっていうのもあるかな。
ー じゃあ、始める1番のきっかけはなんだったんですか。
大阪のライブバーで夜働いていた時、
「昼間の時間帯が空いてるから、なんかできへんかな」って
店長に相談を受けて、自分の店も始めてみたのがきっかけかな。
私、歌うたいでその時、自分のバンドやるのに
ギタリストで参加してもらってたのが、
そのライブバーのオーナーやったりとかして。
ー EARTHLING STUDIOのルーツは音楽にあったんですね。
手間暇について
EARTHLING STUDIOは月に2回、
お弁当デリバリーをしている。
10月某日、お弁当を作るあゆみさんを訪ねた。
早朝から始めて、6時間ほどにわたる長丁場の
仕事風景を覗いた。
10種類ほどのおかずを淡々と作る。
季節の野菜とにらめっこし、鍋の様子を見ながら、
包丁を握る手は止まらない。
滑らかな料理の所作に見惚れてしまいそうになる。
私が見ているのは、弁当作りなのか、ショーなのか。
惜しみなく鍋に注がれる揚げ物用のオーガニック
ココナッツオイル、高知県内で珍しい無農薬の梨、
合鴨米で丁寧に握られたおにぎりと、その中に
ゴロゴロ入った栗、乳製品を使わないグラタン、
里芋の皮の素揚げ、何気なく登場する自家製調味料。
誰かにとっての、たったの一食である。
1時間もせずに空になるお弁当である。
そこには、しかし、彩りと美味しさをまとった
時間と手間と執念が詰まっている。
弁当作りの手間に圧倒された翌日、あゆみさんから
作るの大変やけどたのしすぎるw
配達帰ってきてから2時間気絶してたけど😆
と、メッセージが届いた。
あゆみさんは、あまりにも手間のかかるイタドリの
皮剝ぎをトラウマに感じていたと話すが、
とてつもない手間を愛でているという意味で、
EARTHLING STUDIOの弁当作りもさほど変わらない。
イタドリを食べるための過程を楽しむお父さんの姿は、あゆみさんの仕事ぶりにはっきりと映し出されている。