うちの裏山にイタドリいっぱいになるので、隣のおばあちゃんたちが「これが美味しいのよ~!!」って言ってきて。大阪から引っ越してきて、喋った一発目がイタドリ。(笑)こっちはね、新参者でドキドキしているから「そ、それなんですか。」って聞くと、みんなで手取り足取り教えてくれて。
Lisboaにて。
イタドリのオランデーズソースを囲み、
大阪のポルトガル料理店から、
高知のパン屋になるまでの話を振り返ってきました。
Vol.2では、そんな一家がイタドリと初めて
出合った時の話をきっかけに、
ジョゼがパン作りに込める情熱を探ります。
今日も明日も、朝ごはんの時間はやってくるし、
夜ご飯の時間もやってくる。
日々の平凡な繰り返しを、美味しく生きるコツは、
「飽きることに慣れない」こと。
そんな姿勢が、イタドリの食べ方にも、パン作りにも映し出されていました。
異国をまとった山菜料理 / イタドリのオランデーズソースのレシピ
/ 家族で生きるために美味しいお店を走らせる
祖国にて、記憶に残る美味しい思い出 / 料理とは思い出をしまう術
/ 「Lisboa的、美味しい」を探訪する
2024.11.10.Sun
Vol.2 ポルトガルのベイカーを思い出して
近所のおばちゃんから高知の洗礼を受ける
― イタドリと出会ったのは、高知に移住してきてからですか?
はづき そうです。ちょうど引っ越してきた3月末に。
うちの裏山にイタドリいっぱいになるので、
隣のおばちゃんたちが「これが美味しいのよ~!!」って言ってきて。
初めて喋った話題がイタドリ。(笑)
こっちはね、新参者でドキドキしていて
「そ、それなんですか。」って。
向かいの2軒のおばちゃんが「こうやってやんのよ~!」って。(笑)
手取り足取り教えてくれるんだけど、むき方とか保存の仕方も、
2人とも違うんだよね。
― おばちゃんたち、どうしても食べさせたかったんですね(笑)
はづき うちはこうだよ、うちはこうって。
1人は塩漬け、1人は冷凍。
もう1人のおばちゃんは、普通の塩漬けを。
塩漬けせずとも、塩をパラパラ振りかけて、
冷凍して解凍したらえぐみが消えるんだって。
だから塩「漬け」にはしなくてもいいんだって。
手軽でいいよね。
季節外れの食べたい時に、イタドリが食べたいなと思ったら、
冷凍庫から出して、みりんと醤油で炒めて食べてるって教えてくれて。
― そんな熱烈に教えてくれたら、もう食べるしかないですね。
おばちゃんたちも、共通の話題を探したら、
イタドリだったんでしょうね。
はづき 本当に、引っ越してきてすぐの会話がそれでめちゃ面白かった。
それで、後ろの庭で、3人でめちゃ取って、
めちゃ剥いて食べたよね。
― どうでしたか?
ジョゼ 酸味があって美味しかった。
イタドリゆでてサラダに混ぜたりとかして。
はづき そう、なんか、マヨネーズとかかけてね。
― イタドリをゆでる??
ジョゼ ゆでる、というより、お湯をかける。
ゆでたらすぐにべしゃべしゃになるって聞いてたから、
お湯かけて火を通してた。
あと、生でも食べれるけど、
「すごい酸っぱいですよ」って言われてたので。
― そんなシンプルでもいいんですね。
今日のイタドリは初めての味と組み合わせで、衝撃的でした。
ジョゼ 酸味がまだ残っているものはそういう食べ方でもいいかな。
今日のイタドリを味見したら、
結構しっかり塩抜きがされてたので、
オランデーズソースがいいかなって思って作りました。
気の利いた美味しい挨拶
「いい天気ですね」というのは、
同じ場所にいれば通じる、普遍的な話題。
年齢も性別も価値観も関係がない。
近所のおばちゃんたちにとってのそれが、
「あなたたちの家の裏のイタドリ、
これ美味しいのよ~!!」
だったのかもしれない。
高知にいるだけで、年齢も性別も価値観も関係がない。
しかも、それがタダで美味しいとくれば。
なんて気の利いた挨拶なんだろう、
おばちゃんたちを想像して口角がニッと上がった。
ポルトガルのベイカーを思い出して
― 食材に合わせて、どう食べるかを考えるっていうのが基本にあるんですね。
ジョゼ 基本そう。大阪でレストランやった時も、
すべて季節次第、市場次第。
材料を見て料理を考えるのが好き。
1年中ずっと同じメニューだったら飽きるしつまらない。
パンは、季節によって、天気によって、酵母が毎日違うから面白い。
窯も薪で温めるから、いろんなニュアンスとバリエーションで、
気を付けないといけないから。
季節のもので作れるものを作りたいし。
― なるほど。薪だったら乾燥具合によって、火のつき方も違ったりしますよね。
ジョゼ 火を使いながら、窯を温めて状態を確認しながら、
いつ、入れるべきなのか、出来上がったものを見て、
香りをかいで、何を変えた方がいいかをすぐに考えないといけない。
季節によって湿度が低かったら、ちょっと水分を多めにしたり。
ほぼほぼ毎日バリエーションがあるので頭を使いながら、生地を作る。
そういう、ぼーっとできない仕事が好きで。
― そういう好奇心の原点にあるものって何なんですか。
ジョゼ 子供の時に、家にもおばあちゃん家にも暖炉があって、
その暖炉に薪を足したり、その薪を片付けしたりしてたからかな。
常になんか燃やしてる生活。
火の変化に合わせて、「これしよう、あれしよう」って
行動が変わってくる。
― 小さい頃から火のある生活に触れていたんですね。
確かに、例えば、薪ストーブを使うなら一緒に焼き芋焼こうとか、
上にやかんを置いてお湯を沸かそうとか、
行動の判断基準が火になってくるかも。
ジョゼ そう。ポルトガルでは、パンを窯で焼くのは超普通だった。
電気オーブンで焼いてもいいけど、
窯の方が、ポルトガルの時の思い出がパンに出せるかなと思って
ここで石窯でやろうと思った。
今はまた変わってきているけど、自分が慣れ親しんだ作り方で、
出来上がったものを食べさせたいなって思ってる。
― パンを焼く石窯は、ジョゼがイチから手づくりしたと聞きました。
ジョゼ そうそう。
お店を営業しながら、合間を縫って作ったので、8か月くらいかかった。
面白かったんじゃないかな。
― それは大変、、!そこまでのこだわりがあの窯に詰まってるんですね。
ジョゼ 自分の手で作った窯から、美味しいものが出てくるのが、ほっとする。
自分で窯をつくれば、うまく焼けないときに、
ぜんぶ自分のせいだから納得いくけど、
誰かに頼んだらそうはいかない。それが心配だったので。