うちの裏山にイタドリいっぱいになるので、隣のおばあちゃんたちが「これが美味しいのよ~!!」って言ってきて。大阪から引っ越してきて、喋った一発目がイタドリ。(笑)こっちはね、新参者でドキドキしているから「そ、それなんですか。」って聞くと、みんなで手取り足取り教えてくれて。
Lisboaにて。
高知でイタドリがこんなにも愛されるのはなぜか、
そんな小さな謎を解き明かす探訪の旅。
続いて立ち寄ったのは、自家製酵母と石窯で
丹念に作られたパンが人気のLisboa(リジュボア)。
ポルトガル出身のベイカーであるジョゼの語りには、
18万キロ離れた祖国の料理にまつわる
美味しい記憶が散りばめられていました。
全3回にわたるインタビューでは、
イタドリをつかった Lisboaらしい料理とそのレシピ、
イタドリにまつわる思い出、料理人の美味しい記憶、
日々の料理に美味しさをプラスする秘訣などを聞きました。
明日、作る料理がちょっとだけ美味しくなりますように。
右・塩谷はづきさん(埼玉県出身) 左・ジョゼ・ソーザ・ボテーリョさん(ポルトガル出身)
異国をまとった山菜料理 / イタドリのオランデーズソースのレシピ
/ 家族で生きるために美味しいお店を走らせる
祖国にて、記憶に残る美味しい思い出 / 料理とは思い出をしまう術
/ 「Lisboa的、美味しい」を探訪する
2024.10.28.Mon
Vol.1 イタドリのオランデーズソース
異国をまとった山菜料理
― 今日は何を作るんですか?
ジョゼ イタドリのソテーにオランデーズソースがけを作ろうかなと。
― オランデーズソース?
ジョゼ バターとレモンと黄身を混ぜたソースで、
基本的にマフィンとかアスパラにかけたりする。
― それはなんですか?
ジョゼ これは、片栗粉。アスパラは、皮がついてるので焼き色が付くけど、
イタドリはべしゃべしゃになってしまって焼き色がつきにくいから。
― なるほど、確かに地味な色がさらに地味になりますよね。
ジョゼ オリーブオイルだと温度が高くて焦げるので、菜種油を使います。
後で温度下がったらちょっとバターをここに入れるけど。
イタドリのオランデーズソース
〈材料〉
イタドリのソテー
イタドリ(塩抜きしたもの)200gくらい
柑橘(イタドリ用、今回はすだちを使用)ひとかけ
菜種油(オリーブオイルでも可)大さじ2
バター10g
半熟ゆで卵 1個
オランデーズソース
柑橘類の果汁 大さじ1
水 大さじ1
黄身 4個分
バター 115g
塩 少々
こしょう 少々
〈作り方〉
イタドリのソテー
❶塩抜きしたイタドリをキッチンペーパーなどで
しっかり水分をふき取る
❷イタドリは切らずに片栗粉を両面に降る
❸菜種油(オリーブオイルでも可)をひいて強火で焼く
❹少し焦げ目が付いたら、中火にしてバターを入れて
もう片面も焼き色が付くまで焼く
❺フライパンからあげて、10㎝の長さに切る
❻お好みの柑橘をひと回しして絡める
オランデーズソース
❶果汁、水、黄身を湯煎しながら混ぜて、そこに少しずつ
バターを加えて乳化させる。
(分離してしまったらぬるま湯を加える)
❷塩、こしょうをお好みで加える
❸お皿に、ソテーしたイタドリ、半熟ゆで卵(温泉卵でも可)を
のせて、オランデーズソースをかける。
❹パプリカ粉ひとつまみかけて完成。
はづき 美味しい~!イタドリじゃないみたいだね。
― このソースがイタドリに絡んですごい美味しいです。
イタドリに絞ったすだちのさわやかな酸味が、
クリーミーなソースと合いますね。
はづき アスパラとイタドリって似てるよね。
ジョゼ そう。だから、そういう感覚で、作れるんじゃないかなって。
別に「ばあちゃん寄り」じゃなくても。
― イタドリは、食材としてどうでしたか?
ジョゼ もっと細いと思ってたけど、想像以上に太かったので食感を
しっかり楽しみたいと思ってこのメニューにしました。
今回はバターソテーしたけど、炭火があればイタドリを
グリルにしても美味しいと思う。
― グリルで香ばしくなったところに、マヨネーズ&七味唐辛子を
かけたりするのもおいしそうですね。
これはポルトガル風の食べ方なんですか?
ジョゼ これはフレンチ。もともと修業をアメリカのフレンチレストランで
2年間やっていました。ポルトガル料理によせるんだったら、
温野菜サラダがいいと思う。オリーブオイル&パクチーもしくは、
オリーブオイル&ハーブ&にんにくを潰したペーストのドレッシングを、
湯通ししたイタドリと絡めても美味しく食べれる。
あとはスープに入れてもいい。
硬いパンと一緒に食べたりとかもできます。
家族で生きるために美味しいお店を走らせる
― 小さいころはイタドリを食べてたんですか?
はづき ううん、高知に引っ越してきてからだからイタドリ3年目。(笑)
私は埼玉出身で、ジョゼもポルトガルから初めて日本に移住した先は
大阪だったから、イタドリは初心者なんです。
― そうなんですね。大阪でポルトガル料理をやられてたと聞きましたが、
高知に来るまでの経緯が気になります。
はづき ジョゼが大学生の時、ポルトガルから子供のサマーキャンプの引率者で、
奈良に来てたんです。そこで知り合って、
1ヶ月一緒にキャンプしてたんだよね。
1回ポルトガルに帰ったけど、8か月後に日本に引っ越してきて。
― 8か月後!?フットワークが軽い、、!
そこに、はづきさんも現地のスタッフでいたんですか。
はづき そうそう。その時は、小学校の教員を辞めて、
大阪に引っ越してきて、ふらふらしてたんだよね。
ジョゼが日本で一緒に住みたいって言ってくれたから、
大阪で同棲を始めたんです。
「何を仕事にしようか」ってなった時に、
料理が好きだからポルトガルレストランを開こうって決めて、
ジョゼさんは腕を磨くために修業をスタートしたの。
― ジョゼにとっての日本の魅力ははづきさんそのものだったんですね。
はづき 私も、結婚式場で働いてワインを開ける練習をしたり、
個人の小さいお店でバイトさせてもらったり。
あと、店をひらくなら自分が会計・経理になるから、
簿記とかエクセルの勉強をしたりね。
― お互い二年間の修業を経て、スタートしたのがLisboaだったんですか?
はづき そうです、同じ名前でね。それで、11年経った時にコロナ禍になって。
大阪・北新地のビジネス街でやってたんだけど、お店も休業。ゼロよね。
収入ゼロが半年続いてた。
だったらもはや、こんな大都会にいる必要ないよね。
この後の生活がどうなるかわかんないし。
それに、ディナータイムのレストランだと、
仕込みをして仕事から帰るのが夜明け前だから、
5歳の息子とも会えない生活になってしまう。
昼に仕事ができるパン屋さんで田舎に行こうって決めたんです。
― 家族としての生き方を見直すタイミングで、高知にたどり着いたんですね。