二十代の頃は、もう僕の実家がサーフィン仲間のたまり場みたいになってたわけよ。イタドリが採れる春からサーフィンもシーズンインするから。ほんなら、イタドリを採ってきたおふくろが「あんたら居るやったらこれ一緒に剥いて」って言って。
SO-ANにて。
高知でイタドリがこんなにも愛されるのはなぜか、
そんな小さな謎を解き明かす探訪の旅。
続いて立ち寄ったのは、市場で仕入れる季節の野菜や
自分で釣った魚などで作る定食が人気のSO-AN(そうあん)。
全3回にわたるインタビューでは、
イタドリをつかったSO-ANらしい料理とそのレシピ、
イタドリにまつわる思い出、自炊を美味しく食す方法、
食いっぱぐれない生き方などを聞きました。
明日、作る料理がちょっとだけ美味しくなりますように。
公文 潔さん・高知県高知市出身
イタドリと天ぷらの卵とじ / 料理は承認欲求を満たす手段だった / 料理人の必需品、美味しいを作る為の
2024.11.24.Sun
イタドリと天ぷらの卵とじ
僕はねえ、イタドリの料理って言ったら決まってるね。一つしかない。
― 何を作ってくれるんですか?
今日は、天ぷらとイタドリの卵とじ。
高知でいう天ぷらって「じゃこ天」のことやけど、
それとイタドリを卵でとじる。
春にはうちのランチでも出してるよ。
― これぞ、高知の郷土料理らしいメニューですね。
おふくろの定番イタドリ料理。
今はもう作れなくなってるから、思い出の味やけど、
弁当によく入っちょったね。汁が漏れて嫌なのよ。
ぜんっぜん映えんし。
あなた、イタドリの料理は作ったことないの?
― ほとんどないです。
塩抜きで水に半日つけておくのも、まずそんなに家にいないし!みたいな。
でも、近所のおばあちゃんが作ってくれたのを食べるのは好きです。
そうなんだ。
(居合わせた常連さん)潔さんの格好がそうやで。
お母さんの味の格好やん、天ぷらの色まで再現してる(笑)
― 確かに(笑)
もうちょっとえい格好して来ればよかった。ほんなら着替えるよー(笑)
今日使う出汁は、僕がいつもランチで使っているもの。
この出汁をとった後のガラ(魚)を食べている鶏の卵を使っているよ。
放し飼いで養鶏している知り合いと、料理と野菜を交換してる。
ついでに、この出し殻を餌として鳥に持っていって、
鶏から卵をもらってるから、鶏とも物々交換してるんだよね。
― その出汁は何を使っているんですか?
じゃこと鰹節と昆布。おふくろも同じ出汁だったね。
イタドリと天ぷらの卵とじ
〈材料〉
イタドリ(塩抜きしたもの)150g
塩 少々
醤油 大さじ2
みりん 大さじ1
酒 大さじ1
砂糖 大さじ2
お好みの出汁 100ml
卵 1個
じゃこ天 2枚
米油 大さじ1
〈作り方〉
❶米油をフライパンにひいて、5㎝幅に切ったイタドリと天ぷらを炒める。
❷イタドリに油が回ったら、塩、醤油、みりん、酒、出汁を加えて
イタドリが少し柔らかくなるまで5分ほど中火で煮る。
❸溶き卵を加えて、ササっと炒める
― あっさりした出汁の旨味がイタドリに絡んでいて美味しいです。
大きく切ったイタドリがすごくシャキシャキしているから、
卵のふわふわと天ぷらのモチモチを引き立ててますね。
結局、引き立て役か!みたいな。(笑)
料理は承認欲求を満たす手段だった
― SO-ANの料理は、「おふくろの味」が色濃いような匂いがしますね。
そもそも、潔さんと料理との出会いは?
おばあちゃんが、2020年まで60年近く、高知県庁の近くで
「食堂ちか」っていう和洋中の食堂レストランをやってたんよ。
猫の手も借りたいくらい忙しくて人手が足りなかったの。
だから僕は、漬物を並べたり、おばあちゃんのお手伝いして、
お小遣いもらって街で遊んでたわけよ。
デパートの屋上とかスーパーの屋上の遊具とかボウリングとかね。
仕入れも日曜市についていくのが好きになって、
そのうちにどんどん料理が好きになっていったんだよね。
― 料理の何に一番ワクワクしてたんですか?
食べることが好きなのもあるけど、まあ、他に褒められることがなくて。
手伝ったら褒められるじゃん?
褒められるのが嬉しかったからなのかもしんない。
小学校の時から「こっち美味しい」「これ美味しい」って言うと
日曜市の露店のおばちゃんに
「あんた味がわかるね、ええ料理人になるわ」とか褒められたりとかする。で、調子に乗って料理人になってんのよねえ俺。
― じゃあ、小さいころから料理人を目指していたんですか?
そんなこともないんだよ。
僕、机に向かって座って1時間もしたら、もう嫌で嫌でたまらなくなる。
高校も行かなかったし、大学なんてとんでもないけど、
行きたくもないし、行けなかった。
親父が設計事務所をやっていたから、設計士か大工になれって、
料理人の道は反対されてたの。
それで仕方なく、大工を選んだんだよね。
だけどその時、夢中だったサーフィンは昼間しかできないから、
大工仕事も段々サボるようになって。
逃げるように料理の方に転向していったわけよ。
― 厨房や市場でおばあちゃんと過ごした記憶が、
潔さんを「料理で食っていく道」へ誘ったんですね。
料理人の必需品、美味しさを作る為の。
― 潔さんが料理作る時に欠かせない料理道具ってありますか?
あるかなあ、、、、あんまりわかんない(笑)
、、、けど火。ほんとだったら薪でやりたい。
ご飯も火で炊いてるし。
包丁も鍋も、使いやすかったらなんでもいいし、
別になかったらないで、人のものでもいいけど。火は譲れないね。
― なんでですか?
そりゃ、美味しいからね。
鍋を振ると火の通りが早くなるから短時間で作れるでしょ。
短時間でやることが全てじゃないけど、
あの速さと火力でガーって炒めるから、野菜炒めなんかは、
歯ごたえも生かされておいしいんよね。
やっぱりご飯も、絶対電気よりか火の方が美味しい、100パーセント。
お店はガスを使ってるけど、火で料理してると、
自分もなんか元気になるんだよね。
だから、やっぱり電気ではやりたくないなあ。
でね、こうやってね、最後までこうやって使うの、ヘラで。
これが僕のアイテムかな(笑)
― 最後の一滴まで無駄にしないのが、料理を美味しくする
ポイントなんですね。これだったら私もできそう。