皮剥いたりとか、採った後の
処理が面倒くさいって
わかっているのにも関わらず、
採ってしまうのよね。
もったいないって思うからかな、タダやし。タダで食べれるものがその辺りにあって、置いて帰る
わけにもいかん、みたいな。
Atelier
tsumugiにて。
高知でイタドリがこんなにも愛されるのはなぜか、
そんな小さな謎を解き明かす探訪の旅。
SO-ANの次に立ち寄ったのは、季節の野菜を中心に
設える折詰弁当が人気のAtelier tsumugi(アトリエつむぎ)。
全3回にわたるインタビューでは、
イタドリをつかったAtelier tsumugiらしい料理とそのレシピ、
イタドリにまつわる思い出、美味しさのゴールなどを聞きました。
店主・梢さんの語りの中には、
美味しさにくるまれた苦くて柔らかな記憶の断片まで。
今日も明日も働く人へ。
「食べる」がちょっとだけ心地よくなりますように。
西森 梢さん・高知県高知市出身
イタドリご飯の折詰弁当 / 料理人の相棒、美味しいを作る為の / 弁当に季節を見立てる
2024.12.22.Sun
弁当は冷ますから美味しい
― tsumugiらしいイタドリの料理って何ですか?
イタドリご飯を作ります。
塩抜きしたイタドリを、出汁と醤油でさっと煮るの。
それをエゴマとじゃこと一緒にご飯に混ぜ込む簡単なものなんだけど。
― 炒めるんじゃなくて、煮るんですね。
イタドリって炒めることが多いですよね。
イタドリは油で炒めても美味しいよね。
アクが強いものは、油でコーティングするとえぐみが抑えられるので。
― だから、豚肉やじゃこ天と炒めたりするのが定番なのかな。
アクが強いものは油と相性がいいっていうことですか?
うん。だから、大根とかカブとかの葉っぱも、
湯がいた後に油で炒めた方が柔らかい味になるかな。
アクが苦手な方はその方が食べやすいと思います。
塩漬けイタドリは、すでにアクが抜かれているから、
煮るだけでも十分美味しくなるけれど。
― 「炒める」にはそんな意味があったんですね。
いつも何気なく炒めていたけれど、、。
あとは、油で炒めると旨味が足されるかなって思う。
イタドリ自体が淡白な味なので、油でいためてコクを足したり、
じゃこ天のようなうま味のある揚げ物を足したり。
― 一緒に煮た出汁はご飯にそこまで入れないんですね。
そんなに入れんくて大丈夫。
ちょっと冷ますと、イタドリに出汁の味がしっかり入るので。
― 料理人がいつもササっと作るので、「私にもできそう」って思って
「イタドリと天ぷらの卵とじ」を作ってみたんです。
だけど、煮すぎたのか、ドロドロになってしまって。
結構、すぐトロっとしちゃうよね。
だから今回も、煮るのは3分ぐらい。
そのあと、20分くらい置いて冷まします。
本当にちょっと置くだけでしっかり味が入るの。
お弁当には汁気がない方がいいのでそうしてます。
料理人の相棒、美味しさを作る為の。
― 相棒の料理道具はありますか?
、、、、お箸。先の細いお箸。
特に日本料理は、それぞれのおかずが細やかで繊細なので、
先の方まで集中できるんです。
炒めるときは普通の菜箸を使うけど、
盛り付けは必ずこの細い箸を使います。
京都に半年いたことがあるんだけど、 どこのお店もお箸が細くて。
料亭だけじゃなくて、町のご飯屋さんでも。
実際に使ってみたらとても気に入ったのでお店でも使ってます。
― 梢さんはお客さんにお弁当を出す時にもこの細いお箸を使いますよね。
そうそう。お弁当に入っている小さな具やお豆は、
細い方が安定して取れて食べやすいかなって思う。
お弁当箱の狭いところにも届くしね。
あと、箸先に意識が集中する気がする。
そうすると、ゆっくり味わえるのかなって思う。
イタドリごはん
【材料】(ご飯1合あたり)
イタドリ(塩抜きしたもの) 60g
出汁(鰹出汁) 100〜120ml
濃口醤油 小さじ1
ちりめんじゃこ 8g
えごま 3g
【作り方】
❶ちりめんじゃことえごまを炒る。
❷塩抜きしたいたどりは、5mmくらいの大きさの小口切りにし、
水気をしっかりしぼっておく。
❸鍋に出汁、濃口醤油を入れて火にかける。
沸騰したらイタドリを入れて、弱めの中火で3分ほどさっと煮る。
❹少し冷まして、イタドリに味を含ませる。
❺炊き上がったご飯に、イタドリ、ちりめんじゃこ、
えごまを入れて混ぜる。
(イタドリの煮汁はお好みで一緒に入れるとしっかりした味になる。)
― 最初にじゃことエゴマの香ばしい香りが広がって、
そのうちすごくシャッキシャキのイタドリに出会いますね。
イタドリには、本来の酸っぱさも残ってるし、
塩漬けの塩気もあるし、出汁の旨味も感じる。
箸の異物感が口の中にないからなのか、
丁寧に整えられた味を、舌が迎えに行ってる感じがします。
弁当に季節を見立てる
― お弁当作りで1番テンション上がる瞬間っていつですか。
お弁当の表情がその季節に沿っている時。
例えば12月はね、芋類が美味しくなる時季で
たくさん使うのやけど、地味目な色合いになるんです。
そこに紫芋とか、紅心大根とか、明るい色の食材が入ると、
「ちょっとクリスマスっぽいな」と思ってみたり。
5月になると新緑の季節で、 お弁当も全体的に緑っぽくなる。
出来上がったお弁当を見た時に「ああ、季節の色になったな」と
感じる時がテンション上がります。
― お弁当の中に、季節を見立てるような感覚なんですね。
それってある意味、生活の中のアートみたいですね。
あとは、仕上がった時に全体がうまくまとまる時。
乱切りか千切りか、とか食材の切り方も個性がそれぞれ。
味の濃いもの、薄いもの、酸味のあるもの、苦みのあるものとか。
そういったいろんなバランスがうまくとれた時がテンション上がるかな。