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​マツオカ

パウンドにて。

季節のお菓子が人気のマツオカパウンドにて。

イタドリジャムのパウンドケーキを囲み、

イタドリにまつわる思い出を聞いてきました。

 

Vol.3では、上京して味わった苦い記憶から、

東京で出会ったとあるベーカリーとの思い出まで深掘りします。

迷い悩み、進み、立ち止まる25歳。

只中にいる人も、遠くの記憶に置いてきた人も、

これから通る人も。

あんな料理人、こんな料理人も、25歳を振り返れば、

意外と普通で変だったりするのです。

​​​

​明日の「食べる」がちょっとだけ楽しい時間になりますように。

​季節に急かされて作るお菓子 / 創作は妄想から始まる / 甘いだけがケーキじゃない

​酸っぱくて美味しい失敗 / 無いなら作ればいい / 自分にしかできないことがある場所

25歳、味のない記憶 / 東京で出会った食にアツいベーカリー / お菓子屋がサトウキビを収穫する理由

2025.2.9.Sun

​お菓子屋がサトウキビを収穫する理由

25歳、味のない記憶

― 碧さんが25歳の頃は何をしていましたか?

 

ケーキ屋さんで働いてました。

だけど、その時の記憶があまりないんですよ。

そのお店が忙しすぎて、その環境に馴染もうと、とにかく必死で。

どうやって、何を食べていたか記憶にない…。

もしかしたら、コンビニで済ませよったと思う。

 

求められているタスクに自分のスキルで応えられなくて、

「自分なんて、自分なんて…」って本当に毎日思ってた。

そうしたら、段々追い詰められていって。

ある時、食べたものの味がわからんって気づいたときがあったんです。

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― ものすごく辛い時期を過ごしていたんですね。

 

上京したばかりの時は、

コンビニのご飯は食べ慣れてなかったんですよ。

「こういうのもあるんや、美味しい」って 、

月に1回食べるぐらいやった。

でも、忙しくなるにつれて、だんだん食べ慣れてきて。

疲れ果てた頃には、これが美味しいのかまずいのかわからんけど、

なんかお腹に入れなければいかんっていう、

謎の義務感で食べてたんです。

それで「もう無理や」って思って、そのお店を辞めることに。

 

― だけどその後も、飲食ではない道は選ばなかったんですね。

 

選べなかったんですよね。

自分には飲食以外はできないって思い込んでいたのかもしれない。

他のことやろうっていう気持ちにもなれんかったし。

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東京で出会った食にアツいベーカリー

そのケーキ屋さんを辞めた後、いろんな街を散歩しよったら、

「カタネベーカリー」で求人の張り紙をみつけて、

働かせてもらうことに。

 

― 東京・代々木上原にある人気のパン屋ですね。

 

そう。オーナーご夫妻が本当に素敵な方々で。

食べることに対して情熱がすごく強い。

「ちゃんとしたものを、絶対美味しく食べる」っていう気持ちがある。

そこでは、ジャムとか、パンに入れるあんこを炊いたり、

惣菜とか、デザートのケーキを作るようになっていきました。

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― 「マツオカパウンド」っていう屋号も、

  カタネベーカリーのお二人に命名してもらったとか…。

 

うん。

しばらくしてパウンドケーキを作らせてもらうようになったんです。

『カタネベーカリー』も、片根夫妻の苗字からきていて、奥さんに

「じゃあ、もう屋号はマツオカパウンドでいいんじゃない」

って言われて。

「そうですねえ」とか言って。

 

― マツオカパウンドには、カタネベーカリーでの記憶が

  濃く残っていそうですね。

 

そうかも。私はそこで「食べるもので自分がつくられる」って

いうのを教えてもらって。

カタネベーカリーは、基本的に何でも自家製で作るし、

季節のものを大事にするんですよ。

それがすごい楽しくて。

そこで働けたから、栗とか梅の時期を「逃すまい」って

思えるようになったんやと思う。

― カタネベーカリーで学んだことは、

  碧さんが大切にしている食の哲学でもあり、

  マツオカパウンドを形作る軸もなっているんですね。

 

イタドリとか季節のものがあったら、

自分も「季節がまた巡ってきたな」って楽しくなるし。

もしかしたら食べてくれたお客さんも

「去年のあれ、また食べたいな」って思ってくれるかもしれない、

そんなものをこれからも作っていたいなって思ってます。

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お菓子屋がサトウキビを収穫する理由

カタネベーカリーでは、北海道への研修旅行があって。

オーナーが好きな小麦の生産者に会いにいっていたんですよ。

そのせいか、自分でお店を始めてみると、

原材料がどういう風に育てられるのか知りたいっていう

思いが芽生えてきて。

 

― 実際に生産の現場に足を運ぶこともあるんですか?


私の場合、お菓子の主材料になるバター・卵・小麦・砂糖の

生産現場が気になって。

特に砂糖はお菓子屋が一番使うものだけど、

情報が少なくてイメージしにくいんですよね。

だけど、高知のお菓子屋仲間がサトウキビを育てているのを知って、

「これを逃すことはできん」と思って、

草引きや収穫のお手伝いに行くようになりました。

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― 生産現場に足を運んで感じることって多いですか?

 

すごく多い。

「サトウキビを絞った汁が粉になるが!?」って。

今度は、

「サトウキビの茶色い絞り汁が、どうやって白くなりゆうんやろ!?」

「そもそも、サトウキビって植物ながや!?」みたいな。

 

― お菓子作りも過程が長いけど、

  そもそも砂糖ができるまでの過程も長いですよね。

 

だから贅沢品なんやなって。今も昔も。

砂糖一袋を作るのにかかる労力と手間を身をもって知れたからこそ、

材料一つ一つの価値が身にしみてわかるようになったんですよ。

その気持ちを、お菓子にも込めて作り続けたいなって思っています。

​終わり

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