
季節に急かされて作るお菓子 / 創作は妄想から始まる / 甘いだけがケーキじゃない
酸っぱくて美味しい失敗 / 無いなら作ればいい / 自分にしかできないことがある場所
25歳、味のない記憶 / 東京で出会った食にアツいベーカリー / お菓子屋がサトウキビを収穫する理由
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錆と煤にて。
高知でイタドリがこんなにも愛されるのはなぜか、
そんな小さな謎を解き明かす探訪の旅。
ぶどうのたねの次に立ち寄ったのは、
唯一無二の独創的な空間で食べる南インド料理が人気の錆と煤。
全3回にわたるインタビューでは、
イタドリをつかった錆と煤らしい料理とそのレシピ、
イタドリにまつわる思い出、
"ブレブレで不安定"だった20代の記憶まで。
自分にしか作れないユニークな人生は、
苦みも酸っぱさも混ざり合って美味しくなっていく。
明日の「食べる」が、少しだけワクワクするものになりますように

山田 和子さん (高知県安芸市出身)
本格スパイスカレー作りの相棒 / 味覚のすべてを載せる / 旨味がないものを美味しくする方法
お母さんの味はおばあちゃんの味 / ブレブレで不安定で、何かをしたい / 自分だけの人生を始める方法
スパイスカレーに撃ち落される / 定めたゴールに辻褄を合わせる / いつかの自分が後悔しないように
2025.3.9.Sun
イタドリとネパール山椒のサブジ
ー 錆と煤らしいイタドリの料理がどんなものになるか楽しみです。
イタドリとネパール山椒のサブジを作ろうかなと。
サブジは、スパイスを使った炒め煮のことなんよ。
定番メニューのミールス(南インドの定食)は、
カレー3種に副菜が8種のってるんやけど、
今日はその副菜のひとつをイタドリのサブジにします。

― イタドリの切り方が大胆ですね。
お母さんとかおばあちゃんの作るイタドリの炒め物も、
3~4㎝幅でザクザクきってたから。
イタドリの存在感が残っていいんよね。
― お母さんのイタドリの料理はどんなものだったんですか?
醤油とみりんで炒めたもの。超シンプル。
だけど今日は、南インドスタイルの味で仕上げます。
本格スパイスカレー作りの相棒
― 料理するときに欠かせないアイテムはありますか?
そうだね…。ターメリックとチリかな。
その2つがあれば、カレーはほぼ完成するから。
― 意外!カレースパイスといえば、クミンとかコリアンダーとかのイメージでした。
必須なのはターメリックかな。
― 和子さんの中で、カレーをカレーたらしめてるものは、
ターメリックとチリなんですね。
そうかも。もちろん、コリアンダーとかクミンを入れたら
華やかさは出るんやけど、
カレーの土台を決定づけるのはターメリックやね。
入れるのと入れないのとではもう全然違うから。
私もカレー作り始めた時は、
ターメリックって色付けだけのためにいるんかなって思って
「本当にいる~?こんな苦いのに」
「え。なんかそんな別に大して美味しくないやん。」
って思ってた。

― ターメリックって味するんですか。
そう思うやん?
でも、これがないと「え、カレーではない…」ってなる。
ターメリックを入れた瞬間、それも油とターメリックが
相まった瞬間にカレーの花が咲くんよね。
味覚のすべてを載せる
― …どうしたんですか?
…なんか醤油ほしくなる…。
イタドリは、醤油とみりんで食べてきたから、
「私の知っているイタドリさんはどこ?」ってなってる。
― 脳と舌が混乱してるんですね。
錆と煤の"産みの苦しみ"を間近で見れるとは。
やっぱり醤油をひと回しします…。
普通、パンッ!て味が決まるんやけどね…。

― その「味が決まる」ってのはどんな感覚なんですか?
「ウマッッ!!?」ってなる感覚。
その究極が南インドのミールスなんやけどね。
酸味・甘み・辛み・苦み・旨みとかの、
あらゆる味の構成が完璧なんよ。
一皿に味覚のすべてが載っていれば、毎日食べても飽きないし、
副菜を変えたとしても「ウマッッ!!?」ってなる。
なんて言うんだろう…「まとまる宇宙」みたいな。
― まとまる宇宙…。
そうそうそうそう。な、なんか名言出てしまった(笑)
全部が「味の曼陀羅」みたいな…。
― 味のマンダラ……。「宇宙」ってなんですか…。
宇宙には全部存在してるやん。
味覚の全てが混ざって、丸になる感じが「宇宙」。
甘いだけとか辛いだけのものって、ちょっと重くなるやん。
けど、例えばそこに酸味が加わると、「おやおや?」って、
全部スルスル食べれちゃったりする。
味って、全部の味覚のすべてが混ざる時にすごいまとまるんよね。
だから、ミールスを食べるときに
「全部混ぜてくださいね」って言われたりするよね。
イタドリとネパール山椒のサブジ

【材料】
イタドリ 250g
サラダ油 50ml
マスタードシード 小さじ1
ヒング 少々
カレーリーフ 10枚
にんにくしょうがペースト 小さじ1
玉ねぎスライス ひとつまみ
醤油 一回し
水 適量
きび糖 ひとつまみ
塩 適量
【作り方】
❶イタドリを一晩塩抜きし、ざく切りする。
❷サラダ油に マスタードシード、 ヒング、 カレーリーフ を、
焦がさないように香り出し、 玉ねぎを投入。
すこし周りがこんがり茶色になったら、
にんにく生姜のすりおろしを入れて弱火でオイルに香り付けする。
❸そこに、ざく切りしたイタドリを投入し、炒める。
❹醤油をひと回し入れて水分が少なくなっていたら、
水を入れて含め煮する。 味が入りにくいので、
ゆっくり火を入れ、きび糖を軽く入れて味をまとめる。
❺火を止めて冷めたら味が染み込むので、少し待って味見をし、
塩加減を調整する。

イタドリとネパール山椒のサブジがのったミールス
旨味がないものを美味しくする方法
― 山椒の存在感がすごいですね。色んな方面からパンチが来る…!
青唐辛子の青みに、ニンニクとパクチーのインパクトに、
イタドリのシャキシャキ。初めて出会う味です。
この味を作っているものってなんですか。
ニンニクと生姜の旨味が重要な役目を果たしてる気がする。
あと、パクチーが入ると印象がガツンとエスニックに変わるよね。
作りながら思い出したけど、
イタドリの食感はシャキシャキしていて美味しいけど、
旨味さんはちょっといないかな。
言うたらかわいそうやけど。
― 素材に旨味がない時は、どうやって美味しくしますか?
例えば、オイルをギーっていうバターに変えたり、
ココナッツファインを入れてコクを加えたり。
今回みたいに、ニンニクとか生姜で旨味と香りをつけるかな。

普段は、野菜自体に旨みがあるから少し塩を入れたり、
スパイスを入れるだけで、コクがでるんよね。
でも、イタドリは旨味があまりなくて、味が淡白だから、
塩をいくら入れたりしても味が決まらないわけよ。
だからイタドリは、出汁と炒めたり、
お醤油とみりんで味を染み込ませて、
旨味を出す「含め煮」が定番なんやろね、と思う。