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二十代の頃は、もう僕の実家がサーフィン仲間のたまり場みたいになってたわけよ。イタドリが採れる春からサーフィンもシーズンインするから。ほんなら、イタドリを採ってきたおふくろが「あんたら居るやったらこれ一緒に剥いて」って言って。

SO-ANにて。

市場で仕入れる季節の野菜や自分で釣った魚などで
作る定食が人気のSO-AN(そうあん)にて。


「イタドリと天ぷらの卵とじ」を囲みながら、
料理の必需品や、料理人を志すまでのお話を聞いてきました。

Vo.2 では、店主・潔さんのイタドリに
まつわる思い出を
きっかけに、
イタドリを採っていた川原から、

自身が仁淀川で主催する国際水切り大会に
込める想いまで
探ります。

明日、作る料理がちょっとだけ楽しくなりますように。

2024.12.1.Sun

​Vol.2 イタドリという公共性を食べる

​母に連れまわされたイタドリの味

― 記憶に残るイタドリにまつわる思い出はありますか?

 

14歳から知り合いに誘われて、サーフィンを始めたの。

僕が20代の頃は、実家がサーフィン仲間のたまり場になってたわけよ。

イタドリが採れ始める春には、サーフィンもシーズンインするから。

ほんなら、イタドリを採ってきたお母(おかあ)が

「あんたら居るやったら、これ剥きや、食べらしちゃうき」って。

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― どんな料理だったんですか?

 

今日作った卵とじは定番だったね。

塩漬けを半分ちょっと塩抜いたら、漬物みたいに食べれるがで。

醤油たらして、鰹節をかけたらすぐに食べれる。

 

― 潔さんはイタドリを採りに行っていたんですか?

 

うちのお母が、僕を無理やり連れて行くぐらい大好きで、

よく一緒に行ってたね。

遠くまで行くこともあれば、近所で採ったりもしたよ。

往復1時間かかるようなところまで買い物に行くんだったら、

10分圏内でポンポンって川原から採ってきて料理した方が楽だもんね。

​川原のイタドリは誰のもの?

― じゃあ、潔さんが買い物に便利な東京にいたら

  イタドリを食べないですか?

 

道に生えていれば採って食べるけど、

高知の倍の値段で買って食べるかっていうと、

よっぽど恋しくならない限り、買わないよねぇ。

 

― イタドリへの愛は「タダありき」というところですか(笑)

 

そうね~(笑)

だけど、春になったら必ず採りに行って食べる、

食卓には絶対に必要な山菜よね。

ちょっと独特な味はあるし、メインにはならん食べ物だけど。

川の周りに生えるフキとかイタドリは誰でも採りやすい。

ほんで怒られん。川は誰の持ち物でもないから。

 

― 言われてみれば、確かに。

  年齢も性別もお金も関係なく、誰でも採れますね。

  タダだから美味しいのか、自分で採るから美味しいのか、、

  どっちもなのかもしれないけれど。

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僕の経験上ね、どっちか言うと、

女の人の方が積極的に採りに行きたがるね。

もっと猟的なものになると男が獲ることが多いよね。

 

― 道淵や川原に生えていて、誰でも採集できるイタドリって

  ピースですよね。イタドリの前では皆平等、というか。

 

キノコとか、タケノコは、山に生えているものだから、

人の山だと入れないじゃない?

 

― そう考えたら、川とか川原って皆のものなのかも。

​利己的に川を愛して

― 川といえば、仁淀川で水切り大会を主催していると聞きました。

 

そう。「仁淀川お宝探偵団」っていう団体でね。

河原の石を川面に投げて、水の上を跳ねさせる水切りの国際大会ね。

始まって20年経つかな。

水切りのほかにも、仲間と一緒に、子供のキャンプとか、

釣り大会とか釣り教室もやってるよ。

 

― 水切りを大会にしちゃう発想が斬新ですよね。(笑)

 

美しさ・飛距離・回数の総合評価で順位を競うんよ。

県外、海外からの参加者が増えてきて、

レベルがどんどん上がってきてるのよ。

去年のチャンピオンの橋本くんは、水切り教室やってくれるから。

そこで彼に習ったやつがまたガンガン上手になってきている。

非営利団体だからほぼボランティアでやってんだけどね。

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― それでも、20年間続けられてきた理由は何なんですか?

 

川が好きになるとそれが汚れたり破壊されるのは嫌じゃない?

自然の大好きな人間を作るために始めたんだ。

だけど、実際は、やることによって自分が癒されてるんだけどね。

やることで自分の気が済むというか。

アウトプットしたいっていう気持ちを、

ここで出しているみたいな感じなんだよねぇ。

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​21世紀に呑まれそうなときは

10月、仁淀川国際水切り大会が開催された。

 

至って真面目に熱く、大会を仕切る運営陣、

一年かけて磨いた腕を披露する選手、

水面に走り出した石の軽やかな舞い、

向こう岸に届きそうな石の行方に歓喜するギャラリー、

そこに漂う緊張感、穏やかな川の流れ。

 

会場では、大会に賛同した飲食店も出店する。

彼らも時に、選手として石を投げる。

 

エネルギーや知恵、時間を、水切りに結実させる「面白がり力」。

これは、21世紀のオアシスだと思った。

翻って、イタドリはどうか。

 

不味くはないけど、特別美味しいわけでもない。

食べるのに時間も手間もかかる。

地味な色。

道端に生えるただの“雑草”。

 

イタドリを、美味しく食す営みにも

きっとこの「面白がり力」が通底している。

 

石と川を前に、イタドリを前に、私はどれだけ面白がれるだろうか。​

21世紀という深い海で、優雅に泳ぐ力が試されている。

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川原のイタドリは誰のもの
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